少年よ、大志を抱け
聖騎士団最年少の団長であるジャンが、アシャンに告白したのはつい昨日のこと・・・。 アシャンからOKの返事をもらって舞い上がっていたジャンだったが、 一晩たってまた気になることが出来てしまった。 こういう時に頼りになるのが、同じ騎士団長であるレオンだ。 なんたって、先日自分がアシャンのことを思い詰めて、 どうしたらいいのかわからなくて聖騎士の仕事も手に付かなくなってしまった時、心配してアシャンに口添えをしてくれたのが、レオンだったのだから。 とにかく恋が実ったことも、彼にまだ報告していない。 きっと心配しているはずだ。それからまた相談してみればいい。 そう思い立ち、ジャンは慌ててレオンの部屋へ駆け込んだ。 「やったじゃないか、ジャン!」 「うんv これもレオンのおかげさ」 思ったとおり、レオンはジャンからアシャンとのことを聞くと、自分のことのように喜んでくれた。 それがジャンは嬉しかった。まるで本当の兄のようなレオンに心から感謝していた。 「・・・で、ついでと言っちゃなんだけど、教えてほしいことがあるんだよ」 「おいおい、女の子との付き合い方なんて言うなよっっ」 本気であせっているレオンに、ジャンはきっぱり否定した。 「違うよ!・・・アシャンがね、こう言ってくれたんだ」 そう、昨日アシャンは自分の想いを受け止めてくれた。 でも、その時彼女はジャンが思いもよらなかったことを口にしたのだ。 『小さな家を・・・いただけますか? そこで、ジャンさまを待っていたいから・・』 待つ・・・?!待つってどういうこと?! 君は僕と一緒にいてくれるんじゃないの? ジャンが意味が分からなくてそう問うと、 アシャンは困ったように微笑みながらこう言うだけだった。 『大丈夫ですよ。私、ずっと待っていますから・・・。 ジャンさまが誰にも負けない騎士になるまで、ずっと待っています・・』 その言葉は信じられた。そう、彼女だからこそ。 「だからね、僕は約束したんだ。 でも・・・誰にも負けない騎士ってどういうものかなぁって・・・」 いつ君を迎えにいけるんだろう? 抽象すぎてよく・・・分からないんだ。 ジャンの不安な心情を理解したレオンは、「なるほど」とうなづいた。 「要するに・・・アシャンに今のお前じゃダメだって言われたんだろ?」 「そりゃあ、もうきっぱりはっきり言われたよ」 つまりは、そういうことだった。 赤くなりながらチェッと舌打ちするジャンを見て、レオンは苦笑した。 (さすが、アシャン・・・聖乙女候補生だけあって手厳しいな・・・ だが・・・そいつは真理だな) よし、ここは一つアシャンの心も汲んでやらないとな・・・とレオンは思った。 なぜなら、ジャンの恋を応援するとはいえ、多少アシャンを脅したようなものだったからだ。 『あいつ・・・アシャンがいないと何もできないんだ。 このままじゃ聖騎士団長としてもダメになる。 なんとかしてやってくれ。アシャン!』 なんて言って、アシャンをけしかけた責任がある。 もっともあの時レオンがアシャンに言ったことは、すべて本当のことだったのだが・・・ レオンはジャンに向かって言った。 「なあ、ジャン。お前はアルバレア史上、最年少で聖騎士団の団長となった者だ。それだけお前の力が卓越していることを物語っているわけだが、それだけじゃないだろう。おまえ自身が常に使命を果たそうと努力してきたはずだ。違うか?」 「違わない!」 間入れず、ジャンはきっぱりと答えた。 レオンをまっすぐに見つめる強い視線。 それは溢れるほどの自信だった。 そんなジャンにレオンは満足そうにうなづいたが、 「だがな・・・」と言葉を続けた。 「では、昨日までのお前はどうだ?」 レオンのその言葉に、ジャンはハッと顔色を変える。 「むろん・・・恋をするなとは言わない。 だが、心を乱すあまり騎士としての立場を忘れてしまっていいのか? 今だから言うが、俺はな、ジャン。あのままお前を放っておけば、いずれ団長交代も仕方がないと思っていたよ。 だが、それはつまり・・・騎士団の規律が乱れるだけでなく、このアルバレア王国の守りの要にヒビが入っていたかもしれないってことだ。 そこまで考えたことがあるか・・・?」 「そ、それは・・・・」 淡々と言っていたが、レオンのその言葉は厳しくジャンの心に突き刺さった。 それは青ざめるほどの恐怖。 それほど自分は未熟な人間だったのだと思い知らされる。 ジャンは俯き唇を噛み締めて立ちすくんでいたが、 そんな彼にレオンはポンと肩をたたく。 「とまあ、少し脅かしてみたけどな」 「え?!」 思わず、顔をあげるジャンにレオンはウインクした。 「つまり・・・お前はまだまだ発展途上ってコトさ」 そう言って、ジャンの頭をぐりぐりとなぜ回した。 「なーに、俺が鍛えてやるから安心しろ。 アシャンにも俺に負けないようにって、啖呵切ったんだろ?え?」 「え、あ、ははは・・・う、嬉しいよ、レオン」 冷や汗をかきながら、ジャンは笑った。 だが、レオンの手は大きくて心地良かった。 いつかは自分も必ずそうなってみせる。 そうして胸をはってアシャンをむかえにいくんだ。 そう誓うジャンだった。 弱みを見せるな 自信を持て 誰にも負けないほど強くなれ。 お前の乙女を守るために− |
FIN |
《あとがき》 これは最初漫画で描いてたものです。ジャンのEDイベントも結構好きかな。 (アニメは・・・ですが) |